ブラックフォーマル用のパンプスは、出番こそ少ないものの、いざという時に確実に必要になるアイテムです。高品質な靴を1足購入したならば、それを10年、20年と長く履き続けるために、葬儀後のアフターケアが極めて重要になります。まず、帰宅後の最初のアクションは「湿気取り」です。葬儀で一日中履いた靴は、コップ一杯分もの汗を吸っていると言われています。すぐに靴箱にしまうのはカビの最大の原因となりますので、風通しの良い日陰で2、3日は休ませてください。この時、新聞紙を詰めておくと内部の湿気を効率よく吸い取ってくれます。次に「汚れ落とし」です。葬儀では線香の灰や、墓地の土埃などが靴に付着しています。乾いた柔らかい布や、馬毛のブラシを使って、表面のホコリを優しく払い落としてください。革製の場合は、少量のクリーナーで汚れを浮かせ、その後無色のクリームで栄養を補給します。葬儀用なので、ピカピカに光らせる必要はありません。しっとりとした質感を保つ程度に留めるのがコツです。布製の場合は、ブラシで毛並みを整える程度にし、水拭きは避けてください。次に、靴の「休息」です。ブラックフォーマルは連続して履くことが少ないため、長期間保管することになります。保管の際は必ずシューキーパー(木製が理想的ですが、なければプラスチック製や紙製でも可)を入れて、型崩れを防いでください。また、靴箱に直接入れるのではなく、不織布の袋に入れてから箱に入れると、他の靴との摩擦や傷を防げます。カビ対策として、箱の中に乾燥剤と防虫剤を一緒に入れておくことも忘れずに。そして、半年に一度は靴を箱から出し、風に当てて状態をチェックしてください。革の乾燥が進んでいないか、中敷きが剥がれていないかを確認することで、急な訃報があった時に慌てずに済みます。もしヒールの底が少しでも削れていたら、早めに修理店へ持って行きましょう。早めのメンテナンスが、靴の寿命を飛躍的に伸ばします。自分の葬儀用パンプスを大切に扱うことは、自分自身の「人生の節目」に対する姿勢を整えることでもあります。丁寧に手入れされた靴を履く時、人は自然と身が引き締まり、礼節ある行動ができるようになるものです。一足の靴を慈しみ、長く使い続ける。それは、物を大切にする心を通じて、故人との縁を大切にし続けることにも通じる、美しい習慣なのです。