葬儀に参列する際、私たちは「弔問客」という立場になります。そして、その対極にいるのが、葬儀を主催する「当家」、すなわちご遺族です。故人を悼む気持ちはもちろん大切ですが、同時に、悲しみの中心にいる「当家」の方々へ、最大限の配慮をすることが、参列者として最も重要なマナーと言えるでしょう。「当家」の方々は、私たち弔問客には計り知れないほどの深い悲しみと、葬儀を滞りなく進めなければならないという重圧の両方を抱えています。その心身の負担を少しでも軽くするために、私たち参列者ができることは何でしょうか。まず、受付やご遺族への挨拶は、簡潔に済ませることです。長々と世間話をしたり、故人との思い出話を語り始めたりするのは、相手の時間を奪い、多大な負担をかけます。「この度はご愁傷様です」と静かにお悔やみを述べ、深く一礼する。その短いやり取りの中に、心を込めることが大切です。服装や香典、焼香の作法といった基本的なマナーをきちんと守ることも、「当家」への配慮です。マナー違反の行動は、式の厳粛な雰囲気を乱し、ご遺族に余計な気遣いをさせてしまいます。事前に作法を確認し、失礼のないように振る舞うこと自体が、無言の思いやりとなります。また、式の進行中は、司会者からの「当家の皆様は…」といったアナウンスに注意を払いましょう。それは、ご遺族が動くべきタイミングを示しています。その際に、参列者が通路を塞いだり、不必要に動き回ったりすると、式の進行を妨げてしまいます。ご遺族がスムーズに動けるよう、常に気を配る姿勢が求められます。そして、もし「当家」の意向として、香典辞退や家族葬での参列辞退が示されている場合は、その意向を必ず尊重しましょう。良かれと思ってした行動が、かえって「当家」の負担を増やしてしまうこともあるのです。故人を偲ぶ気持ちと、「当家」をいたわる気持ち。その二つを両輪として行動することが、参列者としての最も美しく、そして正しい作法と言えるでしょう。