「無宗派葬儀」という言葉を聞くと、多くの人は「宗教者を一切呼ばない、宗教色を完全に排除した葬儀」というイメージを抱くかもしれません。確かに、多くの無宗派葬儀はそのような形で行われますが、実は「無宗派」という言葉は、必ずしも「反宗教」や「非宗教」を意味するわけではありません。むしろ、特定の宗派の形式に縛られず、宗教とより柔軟に関わるという選択肢も、無宗派葬儀の中には含まれています。例えば、故人や遺族が特定の寺院の檀家というわけではないけれど、「故人が生前、般若心経を聞くのが好きだったから、最後に読経だけはしてあげたい」と考えるケースがあります。あるいは、「宗教的な儀式は堅苦しくて苦手だけれど、やはり僧侶にきちんと供養してもらうことで、心が落ち着く」と感じる遺族も少なくありません。このようなニーズに応える形で、無宗派葬儀でありながら、宗教儀式の一部だけを取り入れるという、ハイブリッドな形式が広まっています。具体的には、葬儀のプログラムの一部として、僧侶を招き、読経と参列者による焼香の時間だけを設けるという形です。この場合、僧侶には戒名を授けてもらうわけではなく、あくまでも「読経」という儀式のみを依頼します。そのため、お布施も、伝統的な檀家制度の中での相場とは異なり、読経に対する「お礼」として、より明確な料金体系で依頼できることが多くなっています。最近では、特定の寺院と付き合いがなくても、インターネットを通じて、様々な宗派の僧侶を定額で手配できるサービスも登場しています。こうしたサービスを利用すれば、遺族は自分たちの希望に合った宗派の僧侶に、必要な儀式だけを依頼することが可能です。無宗派葬儀の本質は、形式にとらわれず、故人と遺族にとって最も納得のいくお別れの形を自由に創り上げることです。その選択肢の中に、宗教儀式を部分的に取り入れるという柔軟な考え方があることを知っておくことは、お別れの形の可能性をさらに広げてくれるでしょう。